フリーマジック®の歴史
フリーマジック®誕生秘話
「面ファスナーを洗濯した際に、ほこりやゴミが付着する!どうにかならないのか!」 とある顧客からの一声だった。 担当者が、急ぎ足で社内相談したところ、そういった問い合わせは今まで一つ、二つの話でないことが判明した。通常の面ファスナーの構造上、どうしてもフック部分にゴミや埃がくっついてしまう。 ここから、誰も考えたことのない洗濯してもゴミがつかない面ファスナーの開発が始まったのである。
当時の開発課長:東中志年はこのお客様の要望を、衣服に引っかかる事を防ぐことで解決策を練った。 当時は最先端の設備も乏しく、工場周辺の材木などを集めて東中自ら、彫刻することでフック・ループの形を試行錯誤した。 またテープをスポンジに覆うことで押し出す(握る)とフックが出てくるような構造も検討したが、量産化が見込めず 断念に終わったのである。 自らマジックテープが付属している衣料を自宅の洗濯機に投げいれ洗濯されている様子を何度も何度も観察した。 するとある共通点が導き出された。「ループにはゴミはほとんどつかなかったのだ。」 驚いた東中は発想の転換を図り、柔らかい糸を使うB面(ループ)の中にフックを埋め込む方法を考えた。 その結果、1本のテープにフックを低く、ループを高くし、ループのみが衣服に触れる形を思いついたのである。
細い繊維の中にフックとループがあるため、少しでもずれればループ部分までカットしてしまう。 生地をまっすぐに固定する機械が必要であり、最初はフックカットする刃を含めて手作りから始めた。 フックとループの2つの糸を縦方向に配列して2種類のループ付き織物を作り、フックにするループ部分のみをカットして作る。しかし、肝心の係合力が安定することに難航し、開発は硬直した。 そんな中、一人考え抜く東中の背中を見た開発部のメンバーが、協力を志願し、 係合力(くっつく力)のある一体面ファスナーの配列を一丸となって研究した。その結果、約1800パターンもの中から試行錯誤した末に最適な配列を確立したのである。
1本のテープにフックを低く、ループを高くし、ループのみが触れる面ファスナーが苦心の末、完成した。 開発は1987年から始まったが最初はフック・ループを1本にするという発想ではなかった。 この開発された「マジックテープ」の新ラインナップである、「フリーマジック」は洗濯後にゴミが付着する面ファスナーの課題を解決し、 お客様の要望に営業~開発に渡ることで、見事に応えることが出来た。 こうして日本で、世界で、初のフックとループが混在した「フリーマジック」が誕生したのである。

開発者:東中志年
年表
- 「マジックテープ」誕生!!
- 新幹線のヘッドレスト用途で「マジックテープ」が有名に



- 「フリーマジック」誕生!!
- 宝塚劇場の早着替えで採用
- 大手アパレルメーカーにて採用
- 新幹線のヘッドレスト用途で「フリーマジック」が採用
- 結束バンド用途にて販売スタート


- 小売り商品の販売スタート
- ワーキングウェアで根強い人気に
- 第1~3回アイディアコンテスト開催
- UL94V-2 RCマーク取得製品の開発
- ユニバーサル知育玩具「ペタボー」誕生!!
- 空調服用途で採用
- エコテックス認証獲得




- パナソニック汐留ミュージアムにて「ペタボーの空」
- 青森県立美術館にて「ペタボーの空」
- リサイクル糸「フリーマジック」開発

商品面でカジュアル衣料分野開拓の糸口になったのが、1991(平成3)年に発売した「フリーマジック」だ。通常の面ファスナーは、フック面のテープとループ面のテープの2本で構成されるが、「フリーマジック」は1本の中にフックとループが混在している。フックとループが同じ面にあるから、裁縫時に縫い間違えたり、色合わせに気を使う必要もない。
この発想は昔からあったが、どのメーカーもなかなか商品化できずにいた。通常の面ファスナーの場合、フックとループで素材(共にナイロン系)は異なるが、製造方法は基本的に同じ。フックはループの輪の部分の一部をカットして作る。だが同じ面にフックとループを混在させるとなると、フックにするループ部分だけを選んでカットしなければならない。また、生産方式を考えるとフックとループの配列も問題になってくる。技術的なハードルは高かった。
衣服への引っかかりを防ぐにはどうしたらいいのか。開発グループが研究の末に発案したのが、柔らかい糸を使うループの中にフックを埋め込む形。1本のテープにフックとループを混在させ、フックを短くしてループは高くする。これならループだけが衣服と接触するので、フックが引っかかることはない。糸くずやゴミも付きにくくなる。
フックとループの配列は1800パターンもの中から理想的な形を見つけた。フック部分だけをカットするのは難しかったが、生地を正確に固定する機械や特殊な刃を作って克服。クラレファスニングは業界初の1本面ファスナーの開発に成功した。「フリーマジック」は2002(平成14)年にソフトタイプが発売され、肌着やベビー服用途など新たな市場を開拓しつつある。クラレファスニングにとっても、アパレル用途は全体売上げの10~15%を占める柱の一つに育った。